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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)866号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人の上告理由について、

認知の訴は、昭和一七年の民法の改正により、父母の死後も提起できることになり、法文も「父又ハ母ニ対シ認知ヲ求ムルコトヲ得」とあつたのを、離婚や離縁の訴と同じように「認知ノ訴ヲ提起スルコトヲ得」と改められ(旧民法八三五条)、それと同趣旨が現行法に引き継がれたものと解すべきであり(民法七八七条)、またこの訴につき言い渡された判決は、第三者に対しても効力を有するのであり(人訴三二条、一八条)、そして認知は嫡出でない子とその父母との間の法律上の親子関係を創設するものであること等を考えると、認知の訴は、現行法上これを形成の訴であると解するのを相当とする。本件において、第一審判決の主文は、「被告は原告を認知すべし」と判示して、あたかも被告(上告人)に対し認知の意思表示を命じたかのような文言を用いてあることは所論のとおりであるが、右判決の趣旨とするところは、要するに原告(被上告人)の被告に対する認知請求権の存在することを認め、これによつて両者間に法律上の親子関係を発生せしめることを宣言したものに外ならないと云うことができるのであつて、結局用語が妥当でなかつたにすぎない。そして原判決もまたこの趣旨の下に控訴を棄却したものと認められるから、原判決には所論のような法令の違背はなく、論旨は採るをえない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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